特定防火対象物とは:
用途の一覧と点検・報告の違い
特定防火対象物は、飲食店や物販店、ホテル、病院のように不特定多数の人が出入りする建物や、避難に手助けが要る人が使う建物です。消防法施行令 別表第一の(1)〜(4)項、(5)項イ、(6)項、(9)項イ、(16)項イ、(16の2)項、(16の3)項が当たります。消防設備点検の報告は1年に1回で、非特定防火対象物(3年に1回)より短い周期です。
消防法施行令 別表第一で特定防火対象物にあたる用途
消防法では、建物(防火対象物)を用途ごとに別表第一の「項」に分けています。そのうち、主に不特定多数の人が出入りする用途と、災害のときに援護が要る人が使う用途が「特定用途」です。特定用途の建物を特定防火対象物といい、それ以外を非特定防火対象物といいます。
| 項 | 用途の例 |
|---|---|
| (1)項 | イ:劇場、映画館、演芸場、観覧場 ロ:公会堂、集会場 |
| (2)項 | イ:キャバレー、ナイトクラブなど ロ:遊技場、ダンスホール ハ:性風俗関連特殊営業の店舗など ニ:カラオケボックス、インターネットカフェなど個室で遊興させる店舗 |
| (3)項 | イ:待合、料理店など ロ:飲食店 |
| (4)項 | 百貨店、マーケット、物品販売の店舗、展示場 |
| (5)項イ | 旅館、ホテル、宿泊所など |
| (6)項 | イ:病院、診療所、助産所 ロ:避難が難しい人が入所する社会福祉施設(老人短期入所施設など) ハ:老人デイサービスセンター、保育所などの社会福祉施設 ニ:幼稚園、特別支援学校 |
| (9)項イ | 公衆浴場のうち、蒸気浴場、熱気浴場など |
| (16)項イ | 複合用途の建物のうち、一部に上の特定用途が入っているもの(飲食店が入る雑居ビルなど) |
| (16の2)項 | 地下街 |
| (16の3)項 | 準地下街(地下道に面して続く建物の地階と、その地下道を合わせたもの) |
次の項は非特定防火対象物です。
- (5)項ロ:寄宿舎、下宿、共同住宅
- (7)項:学校など (8)項:図書館、博物館、美術館など
- (9)項ロ:(9)項イ以外の公衆浴場
- (10)項〜(15)項:駅などの停車場、神社・寺院・教会、工場・作業場・スタジオ、車庫・駐車場・格納庫、倉庫、事務所などほかの事業場
- (16)項ロ:特定用途が入っていない複合用途の建物
- (17)項〜(20)項:重要文化財などの建造物、アーケード、山林、舟車
出典:札幌市「防火対象物の用途」、東京消防庁「特定用途とは」、総務省消防庁「防火対象物の用途区分表(消防法施行令別表第一)」(PDF)(いずれも2026年9月28日確認)。用途の書き方は、てんけんどこ編集部が短くまとめたものです。
特定防火対象物と非特定防火対象物の違い
特定か非特定かで、点検の報告の周期や、防火管理の決まりが変わります。消火・避難の訓練の回数も違い、特定用途は年2回以上です(消防計画の作成と届出)。消火器を置く義務も、用途と面積で決まります。
| 項目 | 特定防火対象物 | 非特定防火対象物 |
|---|---|---|
| 主な用途 | 飲食店、物販店、ホテル、病院、社会福祉施設、特定用途が入る雑居ビル | 共同住宅、学校、工場、倉庫、事務所、駐車場 |
| 消防設備点検の報告 | 1年に1回 | 3年に1回 |
| 有資格者による消防設備点検 | 延べ面積1,000㎡以上、または特定一階段等防火対象物 | 延べ面積1,000㎡以上で、消防長か消防署長が指定したもの |
| 防火対象物点検 | 防火管理者が必要な建物のうち、収容人員300人以上、または特定一階段等防火対象物 | 対象外 |
| 防火管理者の選任 | 収容人員30人以上((6)項ロと、それを含む建物は10人以上) | 収容人員50人以上 |
- 消防設備点検:点検そのものは、特定・非特定とも機器点検が6か月に1回、総合点検が1年に1回です。違うのは消防署へ報告する周期です。
- 有資格者:消防設備士か消防設備点検資格者のことです。表の条件に当たらない建物では、資格者以外が点検することも認められています。
- 防火対象物点検:設備ではなく、防火管理者の選任や避難経路の管理など、建物の防火管理を確かめる点検です。点検と報告は1年に1回です。
- 収容人員:用途ごとに決まった計算方法で出す人数です。
点検と報告の回数は消防設備点検の義務と回数に、2つの点検の違いは防火対象物点検と消防設備点検の違いにまとめています。
出典:東京消防庁「消防用設備等点検報告制度(消防法第17条の3の3)」、枚方寝屋川消防組合「消防用設備等の点検・報告」、日本消防設備安全センター「消防用設備等・特殊消防用設備等の点検・報告」、東京消防庁「防火対象物点検報告制度:点検対象」、同「点検・報告の期間」、札幌市「防火管理者について」(いずれも2026年9月28日確認)。
複合用途(16項イ・ロ)と特定一階段等防火対象物
複合用途防火対象物は、1つの建物に2つ以上の用途が入っているものです。一部に特定用途((1)〜(4)項、(5)項イ、(6)項、(9)項イ)が入っていれば(16)項イで、特定防火対象物になります。事務所と共同住宅だけのビルのように、特定用途が入っていなければ(16)項ロで、非特定防火対象物です。
ただし、主な用途に比べてごく小さな部分は、独立した用途として数えず、主な用途の一部として扱われる場合があります。細かい判定は消防本部の基準によります。
特定一階段等防火対象物は、3階以上の階か地階に特定用途の部分があり、そこから地上へ直接出られる屋内の階段が1つしかない建物です。階段が屋外にある場合は当たりません。雑居ビルの上の階の飲食店などが典型です。延べ面積が小さくても、次の決まりがかかります。
- 自動火災報知設備が原則として必要になる
- 消防設備点検は有資格者が行う
- 防火管理者が必要な建物なら、防火対象物点検の対象になる
出典:札幌市「防火対象物の用途」、豊田市「令別表第1に掲げる防火対象物の取扱いに関する基準」(PDF)、岩国地区消防組合「特定一階段等防火対象物」(PDF)、東京消防庁「消防用設備等点検報告制度」、東京消防庁「防火対象物点検報告制度:点検対象」(いずれも2026年9月28日確認)。
自分の建物がどれにあたるか分からないとき
事務所だけのビルでも、テナントとして飲食店や物販店が入ると、特定用途が一部に入る複合用途の建物((16)項イ)になります。入居の状況が変わったときは、区分も見直します。
- 建物に入っている用途と、それぞれの階・床面積を書き出します。
- 上の表で、どの項に当たりそうかを見ます。
- 建物を管轄する消防署に確認します。区分によって、報告の周期や防火管理者・防火対象物点検の要否が変わるためです。